ハワイへの旅 4日目①
- tripampersand
- 2016年4月12日
- 読了時間: 8分
翌日(カウアイ島三日目)は朝から雨だった。
中庭で朝ごはん、も、この天気では…と思っていると、
「こっちよ」
と呼ぶ声が。
でも、そこは明きあらかに、家族の居住スペース。リビングを子どもが走りまわっている。
(五歳くらいの女の子を筆頭に三人の子どもがいる家族経営のB&Bだった。)
しかもオムツ姿。
お邪魔しまーすという感じで中へ入り、リビングを横断。
「ほら、今日は、ここで食べてね」
と案内されたのは、庭に張り出したテラス。庭というより森。
木々のその向こうに見えるのも、緑の丘陵で、まさに自然の中での朝食。
今日も、カーネルおじさんとその奥様と一緒になった。
食事はトルティーヤ。とろけるチーズと半熟卵が絶妙!ボリュームも満点。
本日は、昨日拝めなかったナ・パリ・コーストを目指す(昨日は島の南側を回りこんだのだが、北側から歩いてその景色を間近で楽しむルートがある)ため、寝坊せずに起床。
遅くなると駐車場が一杯になるらしいので、急いで出発せねば!と思っていたのだが、カーネル夫妻(実名は全く思い出せない・・・)と話が弾む!?(こっちは聞き役・・・)
気がつくと一時間は話し込んでいて、すっかり遅くなってしまう。
チェックアウトもしなくちゃいけないし、とバタバタしていると、宿の人が出かける様子。えー、ちょっと待って、まだお金払ってないっ!
慌てて駆け寄ると、
「あ、いいのよ、焦らなくて。今日は誰も来ないし。ゆっくりしてって。私達はこれから出かけるけど、お金と鍵は部屋に置いといてくれればいいから」
とあっさり。
いいんですか。ほんとにそれで・・・。
もし、全額払わない人がいたらどうするんだ、なんてちょっぴり考えた自分が恥ずかしい。そんな腹黒い人はいません。この島には。たぶん。
今まで泊まった宿で、一番よかったかもしれない。もう一泊すればよかったと、後で切実に後悔。
皆様にも是非お勧めしたい!と思う一方、果たして無事たどり着ける方がどれだけいるだろう。
私ももう一度、迷わず行ける自信がない・・・。
さて、ナ・パリ・コースト。行き方は至って簡単。島の北側を道が終わるまで西に向かって突き進めばよい。
途中、信じられないくらい道幅が細くなるが、恐れることはない!(はずだが、不安になるくらい、ほんとに細い。のに、なぜか二車線。明らかに中央線をはみ出さなければ運転できない。)
そして終に終着点。ガイドブックは正しかった。既に駐車場は停める所がなかった。手前の道も狭いので、迂闊に路駐もできない。
どうしよう、と悩んでいると、車に乗り込む人影!
諦めてUターンする車が続く中、出そうな車の前に陣取る。(少々、他の車の邪魔になっていたが、そこは大阪暮らしで身に着けた図々しさで気づかぬフリ。)
そしてどうにか駐車スペース確保。
目の前には素晴らしいビーチが広がっていたが、まずはナ・パリ・コーストを目指さなければ。
切り立った尾根が連なって作る海岸線。その自然美の荘厳さが人々を惹きつけるナ・パリ・コースト。
しかし、問題が一つある。アクセスが非常に困難なのだ。
アプローチは三つ。①海から。②空から(ヘリコプターツアーがいくつも出ている)。③地上から。
懐具合から③を選択した私達は、海岸線を縫うように続くトレイルを歩くこととなった。
海岸線、といっても何せ切り立った崖のような所がほとんどなので、砂浜を歩けるわけではない。山肌にへばりつくように作られた道を歩くのである。
ここは常夏の国。十分も歩けば、額からは汗が流れ出す。
どう考えても日本人向けではない段差の激しい階段。 時には岩をよじ登り、前日の雨でできた沢(というより泥沼)を渡る。気分はフィールドアスレチック・・・。
このコーストの端まで行くには本格的なトレッキングの装備が必要で、途中一泊しなければならない。
とてもそこまでできないとわかっていた私たちの目指す所は、次にたどり着くビーチ。

上って、下ってを繰り返すものの、以前、海は遥か彼方。
時折、眼下に紺碧の海が姿を見せ、挫けそうになる私を励ましてくれる。そう、あの海を間近で見るまではがんばるぞ!
左手は鬱蒼と茂るジャングル。これぞ熱帯、と納得のシダ植物に蔦が絡まる。
鮮やかな南国果実が道端に転がっていることもしばしば。甘い香りが辺りに漂う。
もしかして、食べられる???
しかし、流石の私(味覚とお腹には自信あり)もチャレンジする勇気はなかった。ここでお腹が痛くなったりしたら、それこそ悲劇。もちろん、トイレなかあるわけもなく、急いで引き返せるような道のりではない)
あ、でも、すれ違った人の中には、齧っている人がいたような・・・。
Tシャツは汗を吸ってすっかり色が変わり、お腹も空いて、疲れもそろそろピーク。
と、突然、渋滞が始まった。道が狭いので、ほとんどの場所が一方通行。(すれ違うためには、どちらかが少し広い場所で待機)
そんな中、人が溜まっていたのだ。
どうしたのだろう、と近づくと・・・男性が倒れていた。正確には、横たわっていた。足を踏み外して、痛めたらしい。
下は崖。一歩間違えば大変なことになっていただろう。今でも十分に大変なことだったが。
側には救助隊らしき人の姿。(なぜわかったかというと、目の覚めるようなオレンジの繋ぎの服を着ていたからだ。この蒸し暑い中、長袖、長ズボン。しかも繋ぎとは・・・)
そしてその服には見覚えが。
そうか。さっき、ものすごいスピードで私たちを追い抜かしていった怪しげな人物は、単なる物好きではなかったのか。
それにしても、この炎天下。もう一時間はこの状態だという。本来ならタフガイで通るだろう、逞しい男性(それが徒になったのかもしれない。彼を担いでこの道を行くのはとてもじゃないが無理だろう。)が、心配そうに見守る人々に儚げな笑みを返す姿は何とも痛々しい。
すると、彼の横にいた人が不意に何かを叫びだした。
タオルがどうの、といっているようである。
辺りに群がる人々(十人くらいはいただろか)の反応はなし。私はかばんを探り、おずおずと一枚を取り出した。
「おお、これはちょうどいいぞ。サンキュー」
こうして、私のスポーツタオルは立派なお役目を果たすこととなった。旅の荷物を最小限しか持ってきていなかった私にとっては、バスタオル替わりの貴重な一枚であり、使用済み・・・だったことは忘れて、美しい人助けの思い出として胸にしまっておこう。(後で海に入った時、小さいタオル一枚しかなく、急激に下がった気温の中、タオルを渡したことをちょっぴり後悔したことは、素直に白状しておきたい。)
その後、なるべく道の端から離れて慎重に歩くようになったことは、言うまでもない。
怪我人の横を通過して程無く、道が下りだした。
そして、近づく波の音。
もしかして・・・
海だ!
紛れもない砂浜が目の前に広がっていた。
打ち寄せる波と戯れる人々・・・はあれ?いない。
見ると、遊泳禁止の文字。た、確かに。
足を踏み入れるのを躊躇らうほどの荒々しい波が打ち寄せる。
この波があったからこそ、ナ・パリ・コーストの美しい海岸線が生まれた。波によって削り取られた山肌は地層が剥き出しで、繊細な文様は積み重ねた年月を物語る。
終にゴールした感動をビーチの片隅で妹と分かち合っていると、大きな荷物を背負った男女が現れて、私たちの正面でどん、と荷物を降ろした。(ビーチのど真ん中なので、誰にとっても正面なわけだけど)
泊りがけでトレッキングにいったんだろうな、などと考えていると、突然、その男性がズボンを下ろし始めた。
実に堂々と、海パンからズボンへと着替えを済ませたのだ。何もここでやらなくても……と思ったのは私だけではないはず。(見たくなくても、見えてしまうこともあり…)
そして学んだことが一つ。何事も、堂々とやれば恥ずかしくない!(まあ、ヌードビーチもあるくらいだから)
少々見苦しい映像も混じったが、背後に迫る緑織り成す熱帯林とともに、青い海と空を目に焼き付けた私達。
もっとずっとのんびりしていたかったけれど、そうも言っていられない。もうとっくに昼は過ぎている。
暗くなる前に来た道を戻らなければならないのはもちろんのこと、今日こそは、明るいうちに宿へたどり着いておきたい。
行きもそれなりに大変だったけれど、ほんとうに辛いのは帰り道。
更に、持ってきた水は残り少なく、一口ずつ分け合う状態。そんな中、また前方に、人が固まっているのが見えた。
中の一人が近づいてきた。
「この先に怪我人がいて、今、救助にくるらしいから、しばらくここで待ったほうがいいよ」
あ、私、その人知ってます!私のタオルが使われているんです!(とちょっと誇らしげな心の声。)
それにしても、あの場所を通り過ぎてから1時間、いや2時間は経っている。事故発生から一体、何時間が経過しているんだろう…。
すると、何やら遠くから響いてくる音が。
それはまさしく、道中何度か耳にしたヘリコプターの音。いいなぁ、ヘリツアーか。と思っていると、音がどんどん近づいてくる。そして姿を見せた機体は、前方の山肌近くで動きを止めた。
私達が固唾を呑んで見守る中、一本のロープが降ろされる。
しばらくして引き上げられたロープの先には、何か重そうなものが結び付けられている。
そう、ヘリは怪我人救助にやってきたのだった。それにしても、振り子の原理で物凄く揺れているけれど、あれで、下まで運ばれるのだろうか。
様々な意味で、怪我をした彼には忘れられない貴重な体験となったことだと思う。取りあえず、一件落着。
足が棒のようになったものの、特に怪我もなく、来た道を無事に引き返した私達。
けれど、まだ、今日の目的は達成されていない!なんのために水着を着ているのか!(私たちは「きれいなビーチで一泳ぎ」を楽しむため、朝から服の下に水着を着用していた。)
もう、日は傾くどころか落ちていて、半端ではなく疲れていたが、勇気を振り絞ってTシャツと脱ぐと(自分のバストサイズを省みず、ビキニスタイルの水着を買ってしまったことを、深く後悔。日本では着用不可能…)、ハワイに来てから初めて海に飛び込んだ。
波は激しいものの、水は澄んでいて、熱帯らしい鮮やかな魚達が出迎えてくれる。
特にダイビングスポットというわけではないので、それほど魚の種類は多くないのだが、海の中は地上とはまた違う、美しい世界が広がっていた。
そして文字通り「一泳ぎ」を楽しんだ私達は、早々に海を後にすることとなった。日が落ちるとともに気温も下がり、寒くて長いできなかったからだ。満足に体を拭けるタオルもなかったし…。
こうして充実した一日を過ごした私達は、疲れた体を車に押し込み今夜の宿へと向かった。
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