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オーストリア・スロヴァキア・ハンガリーへの旅 3日目② ウィーン

  • 執筆者の写真: tripampersand
    tripampersand
  • 2016年6月10日
  • 読了時間: 4分

ランチを食べ終えた後は小走りで駅に戻り、メトロに乗ってオペラ鑑賞へ向かう。間に合うかどうかぎりぎりで、嫌な汗が流れる。

駅に降り立つと、ドレスアップしたカップルや家族連れの姿が見られた。どうやら目的地は同じ。間に合ったようだ。

今回、チケットを取ったフォルクスオーパはフォルクス(民衆の)の名のとおり、気軽にオペラを楽しめる場所として親しまれている様子。意外と子どもの姿も多い。服装もメイクもばっちりの方から足元はスニーカーの人まで思い思い。日本人はあまり見かけず、トイレで並んでいると、「もしかして日本の方ですか」と上品な日本人に嬉しそうに話しかけられたくらいだった。

オペラのチケット

さて、肝心の初海外オペラはと言うと。

正直なところ、音楽を聴きに着て苦痛を感じたのは、記憶にある限り初めてのことだった。

時差ぼけと、旅の疲れと、どうにか開演に間に合わなければというプレッシャー。

その上今は、全くわからないドイツ語に晒されている。あらすじに目を通していたものの、現在、どの場面まで進んだのかもよくわからない。もっと、煌びやかな衣装とか、派手なセットでもあれば良かったのに、と現代的でシンプルな演出にも文句を言いたくなってくる。(完全な逆恨み。舞台は素晴らしかったはず・・・。)

眠りに落ちないように無理矢理意識を引き上げる努力を続けた結果、第二幕目くらいからは極度のストレスで、もう今すぐ席を立って出て行こうと何度も考えた。精神が高ぶりすぎて眠ってやり過ごすこともできず、途中で立ち上がる勇気もなく、カーテンコール時に残ったのは、燃え尽き感と苦い教訓。よくばりは禁物。そもそもタイトな日程に、特別に観たいプログラムもやっていなかったのにどうしてもオペラ鑑賞をしたい!と言い出したのは私自身・・・・。

実態はどうであれ、本場でオペラ、その雰囲気は体験した。後は疲れ切った心と体を休めたい。でもその前に夕食、と宿の近くのレストランへ向かったが、目指した店のドアには1枚の張り紙。

工事のため移転して営業します。

ショックを隠しきれずに暫し佇む私たち。

気合を入れ直して、1ブロック先の暗がりに浮かび上がる明かりまで行ってみると、アイスクリームカフェだった。見事にアイスクリームしかない上に、もう閉店するという。

うろうろしているうちに辺りは真っ暗。

結局、確実な方法を取ることになった。つまり、昼に食事をした賑やかな街中まで戻ること。

この旅初めてバスに乗る(メトロは毎回のように、トラムは午前中に乗ったから、これで公共交通機関は制覇!)。

疲れすぎて食欲はなかったけれど、たまたま通りかかったレストランはなかなかの盛況ぶりで心引かれる。

調べてみるとウィーンで最古のバイスルだった。案内された席は穴倉のような造り。低い天井は壁から一体となって続いていて、そこへびっしりとサインが並んでいる。

注文を待っている間、突然がやがやと店の人に連れられた男女がやってきた。何事かと思ってみていると、店員がさっと長い棒をつかみ、天井の一角を指し始めた。

「これが、モーツァルトのサインです。そして、こっちがベートーベン。あっちはシラーで、それから・・・・・・」

店員の説明は澱みなく進む。

ベートーベンのサイン

モーツァルトにベートーベン。そんな彼らが滞在したことのある空間にこうして座っている私達。偶然、たまたまでとってもラッキー。この狭い空間で今晩食事が出来たのは私達4組。なんて幸運!とテンション上がったのも束の間。注文した料理が全く出てこない。途中寝そうになりながら40分は待つ。温厚な日本人でもたまには怒る。

「さっきもすぐ来るって言いながら、なかなか注文取りに来なかったですよね!一体、あとどれくらいかかるんですかっ!」

ウェイターを捕まえて詰め寄ると、

「すぐ、もうすぐ来ますってば。ね、そんな怒らないで下さいよぉ。今日は、団体客が入ってて、こっちもいっぱいいっぱいなんですっ」

逆に泣き言を言われる始末。

空腹と眠気がピークになった頃、料理が運ばれてきた。例の軽薄なウェイターはあの後寄り付かなくなった。代わりに顔に疲労が見られるものの、物腰丁寧な男性が給仕してくれる。

出された料理は、ささくれ立った私達の心をなだめるのに充分すぎるものだった。

繊細で複雑。盛り付けも味付けも絶妙なバランス。そうして私達はあっさりすっかり上機嫌になって、遅めの夕食を終えたのだった。

ウィーン最古のバイスルでの食事

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